お花がすぐに萎れてしまって悲しい…。
そんな経験はありませんか?

こんにちは。
元チーフフローリストで、現在は神奈川県の自宅アトリエでフラワーアレンジメント教室「Atelier Fleurir(アトリエ・フルリール)」を主宰している、茅野優香(かやの ゆうか)です。

花業界で10年以上、本当にたくさんの花と向き合ってきました。
その中で気づいたのは、お花の寿命を縮めてしまう原因の多くが、良かれと思ってやっている些細な「水やり」やお手入れの間違いにある、ということです。

この記事では、私が新人時代に失敗から学んだ経験も交えながら、お花が喜ぶ正しいお手入れの基本と、ついついやってしまいがちなNG行動を、科学的な理由も添えて優しく解説しますね。

この一手間が、お花ともっと長く一緒にいられる魔法になりますよ。
お花との暮らしが、もっと豊かなものになりますように。

【これだけは避けて!】花の寿命を縮めるNGな水やり・お手入れ法

まずはじめに、お花の元気を奪ってしまう、やってはいけないお手入れ方法から見ていきましょう。
もしかしたら、あなたも無意識にやってしまっていることがあるかもしれません。

NG例1:水道水をそのまま…実は花にはストレス?

お水をあげる時、蛇口から出たばかりの水道水をそのまま使っていませんか?
実は、水道水に含まれるカルキ(塩素)は、お花にとっては少し刺激が強いことがあるんです。

私たち人間には問題なくても、繊細なお花が水を吸い上げる「導管」という細い管を傷つけてしまう可能性があります。

教室では、生徒さんに「一晩汲み置いたお水か、浄水器を通したお水を使ってあげてくださいね」とお伝えしています。
ほんの少しの手間ですが、お花への優しさが伝わりますよ。

NG例2:水の量が多すぎる・少なすぎる

花瓶のお水の量も、とても大切です。
多すぎると、水に浸かった茎の部分がふやけてしまい、そこから腐りやすくなります。
バクテリアが繁殖する原因にもなってしまうんです。

逆に、お水が少なすぎると、当然ですがお花は喉が渇いてしまいます。
特に夏場は、お花が水を吸うスピードも速いので注意が必要ですね。

花瓶の3分の1から半分くらいの高さまで水を入れるのが基本ですが、ガーベラのように茎が柔らかいお花は少し浅めに、バラのように硬い茎のお花は少し深めにしてあげると喜びますよ。

NG例3:ぬるぬるの茎や濁った水を放置

花瓶の水が濁っていたり、茎がぬるぬるしていたり…。
これは、お花が出しているSOSサインです。

このぬめりの正体は、水の中で繁殖したバクテリア。
このバクテリアが茎の切り口を塞いでしまい、お花が水を吸い上げるのを邪魔してしまう最大の原因なんです。

私が新人フローリストだった頃、このサインを見逃してしまい、仕入れたばかりの花をたくさんダメにしてしまった苦い経験があります。
「花をモノとして扱うな、命として向き合え」という師匠の言葉が、今でも胸に残っています。

お水は毎日替えて、その際に花瓶もきれいに洗ってあげるのが理想です。

NG例4:エアコンの風や直射日光が当たる場所に飾る

お花は、急激な環境の変化が苦手です。
エアコンの風が直接当たる場所は、人間のお肌と同じで、お花を乾燥させてしまいます。

また、窓辺の直射日光も避けてあげましょう。
強い日差しは、お花の老化を早め、葉が焼けてしまう原因にもなります。

人が心地よいと感じる、風通しの良い涼しいリビングなどが、お花にとっても快適な場所ですよ。

プロが実践する!お花が喜ぶ正しいお手入れの基本ステップ

NGな行動がわかったところで、次はお花がもっと元気になる、プロが実践している基本のお手入れを3つのステップでご紹介します。
難しく考えずに、お花と対話するような気持ちで試してみてくださいね。

ステップ1:「水切り」でお水をゴクゴク飲めるように

買ってきたお花を花瓶に生ける前に、必ずやってほしいのが「水切り」です。
これは、お花が水を吸い上げる力を助けてあげる、とても大切な作業なんですよ。

やり方は簡単。
バケツなどに水を張り、そのお水の中で茎の先端を1〜2cmほどカットするだけです。

なぜ水の中で切るのかというと、空気中で茎を切ると、その切り口から空気が入り込んでしまい、水の通り道を塞いでしまうことがあるからです。
切れ味の良い清潔なハサミで、スパッと斜めに切ってあげるのがポイント。
断面積が広くなるので、お水をゴクゴク飲みやすくなります。

ステップ2:「切り戻し」でいつでも新鮮な飲み口に

毎日の水替えの時に、ぜひ習慣にしてほしいのが「切り戻し」です。
これは、水切りと同じように、茎の先端を少しだけカットしてあげる作業のこと。

お水のなかでずっと浸かっている茎の先は、少しずつ傷んだり、バクテリアで詰まったりしてきます。
毎日少しずつ切り口を新しくしてあげることで、お花はいつでも新鮮なお水を吸い上げることができるんです。

お洋服の袖をまくってあげるような感覚で、ほんの一手間をかけてあげましょう。
この一手間が、お花の寿命を大きく左右します。

ステップ3:水に浸かる葉はすべて取り除く

花瓶に生ける時、水に浸かってしまう部分の葉は、すべてきれいに取り除いてあげてください。
葉が水に浸かったままだと、そこから腐り始め、水が汚れてバクテリアが繁殖する原因になってしまいます。

また、余分な葉を取り除くことで、お花本体に栄養が集中しやすくなるというメリットもあります。
「ごめんね」ではなく「きれいだよ」と声をかけながら、優しく整理してあげましょう。

【茅野さん流】水だけじゃない!花の寿命を延ばすプラスαのひと手間

基本のお手入れに慣れてきたら、もう少しだけステップアップしてみませんか?
私が教室でよくご紹介している、お花がもっと輝くプロの技を少しだけお教えしますね。

ご家庭にあるものでOK!簡単手作り栄養剤

市販の延命剤も素晴らしいですが、ご家庭にあるもので簡単にお花の栄養剤が作れます。
お花にとってのご馳走は、エネルギー源になる「糖分」と、水を清潔に保つ「殺菌成分」です。

花瓶の水に、砂糖をほんの少し(小さじ3分の1程度)と、キッチン用の塩素系漂白剤を1〜2滴たらしてみてください。
これだけで、水の濁りを抑え、お花に栄養を届けることができます。

お花への愛情ごはん、ぜひ作ってみませんか?
ただし、入れすぎは逆効果なので、量は必ず守ってくださいね。

花の種類に合わせた「水揚げ」テクニック

アジサイや枝ものなど、少し水が揚がりにくいお花には、特別なテクニックがあります。
例えば、茎の先端をハサミで十字に割ったり、木槌で軽く叩いて繊維をほぐしてあげると、水を吸う面積が広がります。

さらに上級者向けの「湯揚げ」という方法も。
新聞紙でお花全体を包み、茎の先を数秒だけ熱湯に浸けた後、すぐに冷たい水に入れると、茎の中の空気が抜けて劇的に水揚げが良くなることがあります。

少し難しいかもしれませんが、知っているとお花選びの幅がぐっと広がりますよ。

元気がない時のレスキュー法「深水」

もしお花がぐったりしてしまったら、諦める前に試してほしい応急処置があります。
それが「深水(ふかみず)」です。

お花を新聞紙で優しく、少しきつめに巻いてあげます。
こうすることでお花がまっすぐになり、水圧がかかりやすくなります。
そして、バケツなどの深い容器に、茎がしっかり浸かるくらいの水を張り、数時間そっと置いてあげてください。

フローリスト時代、この方法でたくさんの花たちを復活させてきました。
シャキッと元気を取り戻した時の喜びは、本当に大きいものです。

よくある質問(FAQ)

教室の生徒さんからよくいただく質問にお答えしますね。

Q: 忙しくて毎日水を替えられません。どうすればいいですか?

A: そのお気持ち、とてもよく分かります。
そんな時は、抗菌効果のある市販の延命剤を使うのがおすすめです。
水の濁りを抑えてくれるので、2〜3日に一度の水替えでも大丈夫ですよ。
大切なのは、無理なく続けることです。

Q: 花瓶はどんなものを選べばいいですか?

A: 初心者の方には、中の水の様子が見えるガラス製の花瓶がおすすめです。
水の濁りや減り具合が一目でわかるので、水替えのタイミングを逃しません。
また、口が広すぎないものの方が、お花がまとまりやすく飾りやすいですよ。

Q: 茎はまっすぐ切るより、斜めに切る方が良いのですか?

A: はい、ぜひ斜めに切ってあげてください。
断面積が広くなることで、お水と触れる面が増え、効率よく水を吸い上げることができるんです。
お花にご飯を食べやすくしてあげるイメージですね。

Q: 咲き終わった花はどうすればいいですか?

A: 咲き終わったお花は、他のお花のためにも優しく摘み取ってあげましょう。
傷んだお花からは、他の花の老化を早めるエチレンガスが出ることがあります。
「ありがとう」と感謝しながらお手入れする時間も、また素敵なものですよ。

Q: プレゼントでもらった花束、どうすればいいですか?

A: まずはすぐにラッピングを外して、お花の茎を解放してあげましょう。
そして、この記事で紹介した「水切り」をしてから花瓶に生けてください。
最初の一手間が、お花を長持ちさせる一番の秘訣です。

まとめ

お花のお手入れは、決して難しい作業ではありません。
むしろ、お花と対話し、「声を聞いてあげる」楽しい時間です。

今回ご紹介したNGな行動を避け、ほんの少しの正しい知識と愛情をプラスするだけで、お花は驚くほど長く、美しく咲き続けてくれます。

新人時代、たくさんの失敗を繰り返した私だからこそ、皆さんの「うまくいかない」という気持ちがよく分かります。
でも、大丈夫。

この記事を参考に、お手入れを「面倒な作業」から「楽しい習慣」に変えて、豊かなお花との暮らしを心ゆくまで楽しんでくださいね。